生命力の強い植物 竹
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冬の型紙

    竹1
    竹2
     竹は、日本の日常生活の道具を作るために古くから使用され、祭祀にも欠かすことのできない植物です。現在も正月には門松で新年を祝い、七夕には竹に願いごとを書いた短冊で飾りつけをします。また、竹は生命力も強いため、松・梅とともに「歳寒三友」とされる縁起の良い植物です。

     生活に身近であり、縁起の良い竹は、おのずとデザインにも繰り返し使われています。きものや漆器、陶磁器、家紋など種々の美術工芸品に竹が登場します。おもに布地の染色に使用された型紙にも竹がモチーフとして頻繁に確認できます。そこで、キョーテックコレクションの中から竹がモチーフとして利用されている型紙をいくつかご紹介したいと思います。
    chapter1

     最初にご紹介する型紙は、竹と横縞を交互に並べて市松文様のように構成しています。竹は、まっすぐ伸びることから型紙では縞文様としてよく利用されているように思いますが、この型紙はそこへ一工夫を加え、市松文様になるように構成されています。この型紙は、「突彫」と呼ばれる鋭く尖った刃を型紙にあてて彫り進める技法と「錐彫」とよばれる半円形の彫刻刀を回転させて小孔を彫刻する技法が使用されていると考えられます。
     横縞の非常に細い線を型紙が切れてしまわぬよう彫刻されているところからも技術の高さがうかがえます。また、竹はデザインとして簡略化されていますが、節の形や効果的な線や点を含むだけで一目見て竹であると判断できる点にも面白さを感じられます。
    chapter2

    竹に青海波

     二枚目の型紙は、大きく竹が配されていて、先ほど紹介した直線的なデザインとは異なり、しなる竹が表現されています。大きく配された二本の竹は、市松文様と麻の葉文様になっています。市松文様は、背景の青海波(扇形)とともにかすれた様に彫刻されていて、絣織の雰囲気を出すように彫刻されたと考えられます。本来、絣織は布地を織る段階で文様がつくられますが、型紙の彫刻を工夫することにより、染色でも絣風に仕上げることも可能でした。絣風の型紙も頻繁に制作されていたようなので、絣文様の人気がうかがえます。(KTS04070)
    chapter3

    竹に松

     最後にご紹介する型紙は画面中央に竹が大きく置かれ、松が周囲に配されています。この型紙は遠目から見ると竹と松のデザインであることしかわかりませんが、近づいてみると、驚くほど細かな文様が密集していることがわかります。背景は網目文様になっていて、竹の輪郭は、小さな小孔によって形作られています。竹の内部もまた非常に工夫が凝らされていて、七宝文様と縞で構成されています。近づけば近づくほど、その細かさに目を奪われるのではないでしょうか。なお、竹の輪郭と内部は全て「道具彫」と呼ばれる、文様の形に整えられた彫刻刀を使用する技法によるものです。
     型紙に近づいていくと、一突き一突きの彫刻を重ねて一つのモチーフが完成していく様子を想像してみたくなりませんか。一見すると大胆なデザインに見えますが、近づくにつれ大胆さの中にも繊細さや技術の高さが垣間見える型紙です。(KTS17607)
      キョーテックコレクションから竹をモチーフに使用した型紙をいくつかご紹介しました。竹は本来ならば空へ向かって高く伸びますが、型紙は大きさに制限がありますので、竹の先端はほとんどが省略されるように鋭く不揃いになっています。こうした表現も竹ならでは、なのかもしれません。

    立命館大学ARC所蔵・寄託品 浮世絵データベース
    http://www.dh-jac.net/db/nishikie/search.php
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    Designer's Inspiration(デザイナーズ インスピレーション)| キョーテック×立命館大学アート・リサーチセンター
    - 世界に誇る京の型紙デザイン -
     当社は約80年前 佐野意匠型紙店として京都で祖父佐野義男が創業しました。
     創業者は伊勢の津の出身で三重一中を卒業後、京都で親戚のきもの型紙屋で丁稚をしながら染織を学びました。ほどなく同地で型紙屋として独立し、日本の型紙の大半を生産していた郷里の伊勢の白子(現在の鈴鹿市白子)を仕入のために毎週行き来しながらデザイン提案のできる京都で最大手の型紙屋に成長します。型紙とデザインをこよなく愛し、その頃から蒐集してきた伊勢型紙の秀作がいまも本社の2階倉庫に1万8千点余り眠っています。

     時が経ち現在は使わなくなった型紙をこのまま朽ちさせるには忍びないと、地元 立命館大学の美術アーカイブ界権威の先生とコツコツとデジタル撮影をはじめ、7年越しでようやく今年日本一の検索可能な型紙デザインアーカイブが完成しました。創業者が望んだように日本の優れたきもの古典デザインを、日本のみならず世界のデザイナーに知っていただき少しでも活用いただければ、出身のきもの業界へも恩返しになるのではと考えています。
     現在当社は染織ときもの業界を卒業し、主業はインテリアと電気業界に移り住みましたが、温故知新でデザイン情報を発信するとともに自社の製品デザインにも展開してまいりたいと考えております。少しずつしではありますが、今後の展開に宜しくご期待くださいませ。

    旧屋号 佐野意匠型紙店 四代目代表(現 キョーテック)佐野聡伸
     Our company was founded as SANO Kimono dying stencil workshop more than 80 years ago by my grand -father in Kyoto. He was born at ISE, Mie Prefecture, then after graduated local college, he started to work at his uncle's the stencil workshop in Kyoto. Soon he built his own workshop, every week he went to buy the stencil from SHIROKO near his hometown, later his shop became No.1 major design pattern shop in Kyoto. He loved Kimono and its pattern stencils, and collected eagerly and kept more than 18000 stencils in our head-office storage yard still now.
     After long long time, we feel sorry the stencils are leave to decay, then make up our mind to digital photo reserving with RITUMEIKAN University, world famous recerch centre of art data preservation. It takes 7years to built web searchable data-base.
     Now we sincerely hope that not only Japan but also world designers make use of our stencil data, as a result we can repay our origin Kimono industry. This seems to be our founder's dream.
     However, now we lives away from kimono and fabric trade, we can give you useful design information,and also use ourself as our product design. We will go Slowly but steadily, so please keep your interest on us!

    4th representator of SANO KIMONO DESIGN STENCIL WORKSHOP(old name)
    Toshinobu Sano (now KYOTECH Co,.LTD.)
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